 ここ（AERA）に紹介されているように，本作「コールドマウンテン」は，時代物の恋愛映画としては異例のヒットを飛ばしている，アメリカの南北戦争時代を舞台とした恋愛悲劇である．
負傷した南軍兵士インマン（ジュード・ロウ）は，恋人エイダ（二コール・キッドマン）に会うために，脱走兵の汚名を着て故郷を目指す．残された身寄りのないエイダも，インマンの帰りを信じて，流れ者ルビー（レニー・ゼルウィガー）と助け合いながら戦時下を懸命に生きていく．お互いが過酷な辛い日々に負けずに，お互いを想い続ける，愛の映画である．また，エイダとルビーの間に芽生える女の友情も，本作の評判を上げる要素となっている． |
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| しかししかし，僕にとっては，恋愛模様よりも戦争模様が強烈だ．そして，戦場模様よりも故郷模様の方が，辛かった．戦争は，人を狂わせる．美しい男女と美しい風景が，人間の狂気の怖さを際立たせる． |
| 戦時下のエピソードとして，いくつかの辛いシーンが描かれる．例えば，戦場へは行かずに故郷を守る義勇軍が，脱走兵として故郷に逃げ戻った息子を匿う父親を殺害し，息子が隠れているであろう家の庭で，母親にリンチを加え，たまらず出てきた息子を射殺する．また例えば，食べ物に困った北軍兵士がある農家を襲うシーン．家畜を取り上げるだけでなく，病気の赤ん坊を裸で地面に置き，たまらず母親は隠していたさらなる家畜を差し出すも，北軍は赤ん坊をそのままに，母親をレイプしようとする． |
| 戦場での男同士の戦闘はまだいい．理不尽だとしてもそれが戦争だ．しかし，戦時下の狂気に任せて，罪のない人たちを，権力に物を言わせて陵辱する人間の，なんとおろかなことよ．戦争のむごさに，冷や汗が止まらない． |
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| そしてさらに，そんな人間はいまだ同じ過ちを犯している．米軍のイラク人虐待，何の罪もないイラク人を，些細なミスをきっかけに問答無用で射殺する米兵．なんでなんだ，人間．戦場で殺し合うだけだって，悲劇なのに． |
