話はそれるが"シネマ メディアージュ"について少し．ここは今流行りのシネマコンプレックスで，13のスクリーンがある．一番大きいところで608席，一番小さいところで112席の全3034席．13のシアターが囲むエントランスは，吹き抜けになっていて非常に爽快．指定席制なので，開演前にお台場をぶらぶらできるのもうれしい．シートは普通の映画館のそれよりも広くてふかふか．全席ドリンクホルダー完備．予約制のカップルシートまであるのは余計な感じだったが，壁に星空をイメージした電飾が施してあり，「がんばったんだにゃ」と素直に評価できる映画館だった．"AMERICAN BEAUTY"は一番大きいシアター1での公開．傾斜が大きくつけてあったので，一番後ろの席でも非常に見やすかった．ただしその傾斜のせいか，案外狭いなあという印象を持った．

さて映画の方だが，結論から言うと「人々が熱狂したポイントはどこだったんだろう」という感じ．つまらなかったわけではない．大いに笑ったところもあるし，映画が言わんとするところもわかったつもり．けど共感しなかった．「みせかけだけの幸せから脱却し，人が眉をひそめようと自分が幸せだと感じる道を進む」という話なのだが，そんなこと今さら言われなくてもさあ，という感じで別段刺激的ではなかった．「娘の親友に惚れる」といったような，ある意味不幸なシチュエーションが登場人物達を襲うのだが，それも僕には「そんなこともあるでしょ．人生いろいろだし」といった風に感じられてしまった．これは，ガンやゲイやドラッグといったAMERICAN REALITYにあまり通じていないことも理由だったと思う．

というわけで，僕はこの映画をあまり高く評価できなかった．そして話自体もさることながら，演出も僕には物足りなかった．実は監督が英国演劇界の人で，映画中に非常に演劇的な手法が多く取り入れられていた．そのせいか，知らず知らずのうちにこれまで観た芝居と比較していて，「これ以上に辛口でリアリティのある悲劇，（これまで観た芝居の中に）いくらでもあったもんなぁ」と思ってしまったのである．最初はその演劇的な演出に，「いいぞいいぞ」と思っていたんだけどね．

さてさて，しかしながら，この映画はいい映画である．この映画が人々を熱狂させる力を持つことに異論はない．なぜなら僕も，確かにこの映画の言うとおり，「例え小さな幸せでも，自分が幸せと感じる道を進むこと」が，人生を上手に生きる一つのコツだと思うからである．