夕暮れが暗闇へと進むにつれ，周りが見えなくなって，光線の中心に集中していく．そして，

4つ並んだスクリーンにミスチルの4人が映し出される．どんどん引き込まれていく．旅は光射す方へ．自分の旅を重ねてみたりして．

なぜ知っているのか旅立つことを．手を振って，進むしかないだろうとけしかける．

1996年1月．この曲のポスターを大学の研究室の壁に貼って，卒論を書いていた．思えば遠くに来ていたのに，またあの頃の日々へと旅路は還る．

MCを挟んで，旅モードから恋モードへ．恋の曲を歌いますと桜井さんが言い，

を吹く．出会った頃の曲だったりして，ちょっと横を見る．

名曲ではあるけれど彼らを知る前の曲なので，ちょっとジェラシー．そして期待していた恋の歌は

の方で，気持ちが届いて少し嬉しい．また横を見たが心はそこにあらず．留守宅に思いをはせてる．ピアノアレンジのこれは最高だ．

シフク行きのバスは恋を経て自己の精神へと向かう．

映像と融合しているからだろうか，聞こえ方が違う．自分の中にこの曲のモデルがあるかのようだ．そして精神は身体へと回帰して，

へ．流る血が歌になり，詞になり，メッセージになる．

「ひとつにならなくていいよ」．この意味が僕にやっと届く．血の通う多数のロボットの胸に，歌・科学・愛など様々なイメージが浮かぶ．「ひとつにならなくていいよ．認め合うことができればさ」．ひとつにならなくていい対象は二つでなく多数だ．そしてまた，多数の中の二つでもある．

で，そんなことを思う．この曲の底の深さといったらない．

「close your eyes」と表示されて天使を思い出す．僕らは，世界を見つめてはいけないのか．世界を見つめるにはあまりにも弱いのか．世界は見つめる価値もないのか．目を閉じて，じっと聴いてみる．

しかして，バスはいよいよシフクノトキへ．

「憧れや理想はやっと手にした瞬間にその姿消すんだ」．今，僕は7年前の憧れに手をかけようとしている．その姿はどう変わるのだろうと未来を思う．ここで歌われている歌，今目の前のステージ，桜井さんの才能．それらに比べたら，僕のやらんとすることの小ささよ．なんだかナーバスになってる場合じゃないよな，とすごく，勇気が出る．

シフクバスは心地よくカラオケゾーンへ．

好きなシングル．聞けて満足．

そしてもっと好きな歌．最後の行を，固唾を呑んで待った．

キャッチーではないと思うのだけど，すごくいい．「きっと答えはひとつじゃない」．

いよいよクライマックス．「イェーイ」の連発は気持ちよし．9月11日，2本の塔に登る桜井氏．他意はないとは思うが，「オイル」を思い出してみたりして．

僕に，彼女に，6万5千人に，勇気をくれたHEROと音楽を通じて分かりあえた夜だ．

そしてアンコール．

6万5千人を集めた横国は，今だけ六角橋商店会になる．愉快なバンドが奏でる幸せなメロディ．

最後にまた勇気をもらう．明日は知れない．さあ，手を伸ばそう．

「子供らを被害者に加害者にもせずに」．留守宅を思うと，もう，ただの曲としては聞けなかった．

詞がとってもきれいな歌．また来たいなと思いながら，名残惜しく，気持ちよく，シフクノトキを過ごした．