THE MATRIX RELOADED
YEAR OF THE MATRIX 2003.10.17 Release

前作「THE MATRIX」をマイベストとする僕は,マトリックスオンライン・プレミアムチケットを用意して続編を待っていたのだが,どうしても事情が許さず,劇場まで観に行くことが出来なかった.というわけで,DVDでの観賞となった.すでに完結編の「THE MATRIX REVOLUTIONS」の公開も始まっていて,今更ではあるが,以下に感想を述べる.
まずおさらいすると,前作への感想では,「クラインの壷」系の世界観,仮想と現実を融合したVFX,キアヌをはじめとする各登場人物のかっこよさが良いと書いた.それらの点について,今作では不満が多い.
1.「クラインの壷」系の世界
「クラインの壷」系の世界とは,仮想空間と現実空間がそっくりなために,どちらにいるのかの区別がつかない世界のことである.前作は,キアヌ扮するネオが,現実だと思っていた世界が実は仮想世界(MATRIX)であることに気がつく話であった.現実との区別がつかないMATRIXにまつわる多くの謎が,NEOの視点を通して一つずつ知らされていくところが,前作の大きな面白みであったように思う.
しかし今作では,MATRIXが仮想世界であることを知っていることが大前提になっていて,そもそも「クラインの壷」ではなくなってしまった.そして残された謎も,「MATRIXから人間を解放するには何をすべきか」の1点のみとなってしまい,そしてその謎は何でもありの仮想世界内での(現実世界とは無関係の,結局はプログラム的な)謎であるから,キーメイカーだとかソースだとか言われても,インパクトが薄い.前作の続編である以上,この構造は変えようがないが,前作よりも面白さ減は否めないと思う.
最後に出てきたアーキテクト(MATRIXの設計者)との対話部分は,今作唯一の,何でもありではない謎解きであったので,興味深かった.これがあったので,次回への期待もつながったし,見てよかったと思える.
2. 仮想と現実を融合したVFX
前作の2つ目の面白さに挙げた「仮想と現実を融合したVFX」とは,例えばビルとビルの間を飛んだり,銃弾を避けたりするアクションをさしている.前作では,「現実と区別の付かない仮想空間内」ということで,MATRIX内でのアクションは,曲がりなりにも現実空間でのアクションの延長線上にあったように思う.MATRIX以外ではそんなアクションが見られなかったから,僕は非常に面白く感じたのだった.
しかし今作では,ネオは飛ぶはスミスは増えるわで,それじゃスーパーマンやバットマンなんかと変わらない.人は飛べないし,増えないのだよ.というわけで,ネオ絡みのアクションシーンはどれもどこかで見られるような映像で長く退屈だった(アクションとしてはすごいのかもしれないけれども).しかもネオは強すぎだしスミスは弱すぎ.前作の「どうやってピンチを切り抜ける?」というワクワク・ドキドキはなく,「どうせ勝つんでしょ」という気分になって,アクションシーンを長く感じた(実際にも長いし).
ネオが絡まないハイウェイアクションは,現実世界で起こりうるカーチェイスの延長線上にあったので面白かった.モーフィアスもトリニティも,弱々しくツインズやエージェント達に立ち向かい,どう切り抜ける?というワクワク感がある.やっぱりそうでなくっちゃ.モーフィアスが魅せた抜き胴もよかった.
3. 登場人物
RELOADEDになって新たにキャスティングされたキャラクターにはすかされた.特にバーセフォニー.ポスターになるくらいだからどんな活躍をするかと思えば,ただのお安い嫉妬妻.予想を裏切るすかし方もMATRIXの魅力ではあるが,前作のお間抜けなすかし方と異なり今作はお色気なすかし方.それはそれで単体では楽しめたけど,映画全体としては不満である.
その他バーセフォニーの旦那もちょっとの登場だし,司令官はコケにされたままだし,どうなんでしょう.次回での活躍を期待.また,せっかくキャラの立った人物が多いのに,総じて今作は群像劇になっている.どうにもスターウォーズチックで流してしまう風景であった.
上記3つに加え,前作ではセリフも良かったと感想に書いたが,今回はあまり記憶に残るセリフがない.「The problem is choice」とかあるけれども,イマイチ.唯一気に入ったのは,モーフィアスのセリフ,「We are still alive」(メロンビジアンとの会合後).
ネオとトリニティとのラブラブシーンは,世間的に面白い部分とされているようなのだが,僕的にはそんなに評価は高くない.二人の愛は肝だけれど,時間かけて濃密に描くほどの情報はなかったように思う.二人の愛は,前作で十分伝わったじゃん.今回もさらっとで良かったのに.変にサービスしなくていいのに.ちなみにMさんは,二人が別れてたらもっと面白いのにと言っていた.
とまあ,いろいろと不満を並べたが,ハイウェイバトル以降の後半は良かった.アーキテクトとの対話後,次回への繋ぎとなるネブカデザネル号撃沈のくだりに至るまではワクワクし,REVOLUTIONSへの期待も高まった.そして冷めずに今に至る.さあ,どうなる.To be concluded なところもグーである.


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